| 研究概要 |
当教室では、2系の可移植性ラット骨肉腫を継代しています。一つは、自然発生骨肉腫(J.H.1-OS)とその高転移系であるS-SLMです。もう一つは、化学発癌剤誘発骨肉腫(J.H.2-OS)と高転移系であるC-SLMです。以下の実験は、これら可移植性ラット骨肉腫を使用しました。
1、近年血管新生抑制物質が腫瘍の転移を抑えるとの報告があり、以下の実験を行いました。
1)TNP間欠皮下投与実験:対照群における肺転移巣数が、平均194.4±95.3個に対して、10mg/week投与群では、平均1.0±1.5個と統計学的に有意差をもって減少していました。
2)TNP持続皮下投与:対照群における肺転移巣数が平均264.0±72個、肺湿性重量が平均51.9±14.7gに対し、1.25mg/kg/week投与群では93.5±58.5個、27.4±11.2g、2.5g/kg/week投与群では2.8±3.5個、11.1±5.0g、5.0g/kg/week投与群では0.4±0.8個、8.5±2.3gで、統計学的に有意な減少を認めました。
2、高転移系細胞における Transin(Stromelysin)のmRNAの発現量を Northern Blotting の手法を用いて検索し、低転移系比較検討しましたが、明かな相関はみられませんでした。そこで、RT-PCR法により作製した rat NDP kinaseのcDNA probeを用い、ラットの骨肉腫組織を対象に Northern blot および Southern blot解析を行い以下の結果を得ました。
1)NDP kinase mRNAの発現は、S-SLMおよびC-SLM両系においてJ.H.1-OS,J.H.2-OSに比して有意に増加しており、転移能とは正の相関を示すことが示唆されました。c-Ha-ras mRNAの発現も同様に転移能と正の相関を示し、S-SLMにおいてJ.H.1-OSに比して有意な発現の増加を認めました。
2)c-myc 遺伝子の発現は、いずれの腫瘍においても高転移系と低転移系の間に差はみられず、転移能との相関傾向は認められませんでした。
3)Southern blot hybridization 解析では、 NDP kinase,c-Ha-ras,c-micいずれの遺伝子においても ampl-ification や rearrangementは認められませんでした。
3、異所性仮骨の治療薬である EHDP(ethane-1-hydroxy-1,1-diphosphonate)を投与することによって腫瘍の生物学的態度の変化について観察しました。
1)EHDP単独投与:100mg/kg/weekおよび200mg/kg/week投与群ともに類骨形成が阻害されており未分化肉腫となっていました。BMD計測ではEHDP投与群の皮下腫瘍の平均骨密度は対照群の48%に抑制されていました。しかし、腫瘍の増殖や形成される肺転移巣数には有意差はみられませんでした。
2)CDDP併用投与:EHDP 100mg/kg/week投与下にCDDP 5mg/kgを静脈投与すると、CDDP単独投与群と比較して形成される肺転移巣数に減少傾向がみられました。
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