研究概要 |
我々は,ヒト血清から非特異的反応を最小限に抑えた抗コラーゲン抗体の検出法(ELISA)を開発し,これにより,RA患者の血清には硝子軟骨で合成されるII型コラーゲンに特異的な抗体が存在し,とくに,発症直後の同抗体の出現率が極めて高いことを見い出している。今回は,RAの発症と進展における抗II型コラーゲン抗体産生の役割を検討するために,II型コラーゲン分子の抗原決定基を検索すると同時に,RA患者の関節軟骨における抗II型コラーゲン抗体の存在様式を観察した。 その結果,RA患者における抗II型コラーゲン抗体は,II型コラーゲン分子のCB-8とCB-11と強く結合し,その他弱いながらもCB-9,CB-10,CB-12などとも広く反応することがわかった。このことから,RAにおけるコラーゲンの自己抗体は,II型コラーゲンの三本鎖へリックス構造のほぼ全域にわたるconformational determinantsに起因していることが強く示唆された。また,RA関節軟骨基質を細切して抗II型コラーゲン抗体も検出したところ,同抗体は軟骨基質の比較的表層部分に結合していることが判明した。 以上のことから,何らかの原因でRAに羅患すると,生体は関節軟骨のII型コラーゲンを抗原として認識し,これに対する自己抗体が産生され,これが免疫複合体などを形成して関節炎を惹き起こし,炎症は慢性化をたどるものと思われる。RAにおいてのみ,なぜII型コラーゲンに対する特異的抗体が産生されるのであるかという疑問は,今後の検討課題と考える。
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