研究概要 |
敗血症性多臓器不全における肝不全と肝不全の典型である劇症肝炎の肝細胞および全身のエネルギー代謝について比較検討した。RQは敗血症性肝不全群でAKBRが低いと1に近く,劇症肝炎群ではAKBRに関係なく1に近かった。エネルギー代謝活性は敗血症性肝不全群の方が有意に高値であった。エネルギー基質は敗血症性肝不全では外から脂肪が投与されていないにもかかわらず脂肪が,劇症肝炎ではAKBRが低値であるにもかかわらず糖が用いられていた。代謝障害の場が敗血症性肝不全では肝および全身,劇症肝炎では肝に限局していることが示唆された。肝不全の栄養管理にあたってはカロリー投与量,エネルギー基質をAKBR,ケトン体量,RQ,energy experditureに基づいて選択すべきである。Plasma exchange(PE)に肝エネルギー代謝改善作用を認めた。Continuous hemofiltration(CHF)およびCon-tinuous hemodiafiltration(CHDF)は水・電解質,酸塩基平衡の調節およびCre,BUNの溶質除去等の人工腎としての機能の他にmediatorの除去能力を有することを認めた。さらにCHDFをPEとともに用いるPE+CHDF併用法を施行し,劇症肝炎の救命率を改善することはできなかったが,有意な意識の改善をみた。CHDFは肝性昏睡起因物質と考えられている中分子量物質の除去に優れているために意識の改善に有用であったものと考えられる。PE+CHDF併用法を術後敗血症性肝不全合併多臓器不全症例に対しても用い,最終的には救命できなかったが,意識の改善,肝不全状態からの離脱,得ることができた。したがって,PE+CHDF併用法は敗血症性多臓器不全における肝不全の治療法として有用であると考えられた。以上よりCHDFは人工腎としてだけでなく,人工肝としても有用であることが明らかとなった。
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