研究概要 |
門脈・下大静脈と上大脈間の潅流バイパスを施行後、肝臓を摘出し無肝状態とした麻酔下成犬12頭を用いた。12頭を3群に分け、A群はブドウ糖非投与群、B群はブドウ糖0.3g/kg/時間投与群、C群はブドウ糖0.6g/kg/時間投与群とした。左大腿動脈から動脈圧、左大腿静脈から下大静脈圧、腸間膜静脈から門脈圧を測定した。右内頚静脈より挿入した肺動脈カテ-テルより肺動脈楔入圧、心拍出量を測定した。同時に動脈血と混合静脈血のヘモグロビンと血液ガスを測定し,酸素供給量、酸素消費量を算出した。なお、糖代謝の指標として、血糖値、門脈一動脈血ブドウ糖較差、乳酸、またNa、K、Cl、イオン化Caを、開腹後バイパス前、バイパス直後、肝遊離操作前、肝遊離後肝血行遮断前、肝血行遮断後5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間に測定した。結果は、3群間で動脈圧、門脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量、酸素供給量、酸素消費量に差を認めなかった。3群とも、動脈圧、門脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量、酸素供給量、酸素消費量ま、開腹後バイパス前に比べて、バイパス直後、肝遊離操作前、肝遊離後肝血行遮断前、肝血行遮断後は低下傾向を示した。血糖値は、CおよびB群では経過中よく維持されたが、A群では肝血行遮断後に低下傾向を示した。各測定時点で、門脈一動脈血ブドウ糖較差および乳酸値は、C群、B群、A群の順に大きい傾向を示した。Na、K、Cl、イオン化Caは、各測定時点で3群間に差を認めなかった。結語として、麻酔下で無肝状態の犬の糖の投与量は、0.3〜0.6g/kg/時間が適当ではないかと示唆された。今後は、無肝状態における糖代謝のみでなく、アミノ酸、脂肪代謝なども検討するべきである。
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