研究概要 |
手術的に摘除された腎細胞癌及び正常腎組織に対して,新鮮凍結切片を作成し,免疫組織学的にRCC上でのICAMー1の発現を検討してみた.興味深いことに正常腎ではRCCの発生母地と考えられる尿細管上皮細胞ではICAMー1の発現はみられなかったが,腎細胞癌では高率に発現され,腫瘍内浸潤単核球の程度とその発現が相関していた.さらに腎癌細胞株であるACHN,KRC/Y,NRC12についてICAMー1の発現についてフロ-サイトメトリ-により検討してみるとInterferon(IFN)ーγのみならずtumor necrosis factor(TNF)ーα,インタ-ロイキシンー1(ILー1)βでICAMー1発現の増強が認められた.腎癌細胞でのICAMー1の発現は腫瘍内浸潤単核球によって産成されることが考えられる各種のサイトカインにより増強されることが考えられる.さらに腎癌細胞株ACHNについて無処置,IFNーγ処理,TNFーα処理の3種の細胞からRNAを抽出し,これに対してICAMー1cDNA probeを用いてNothernblotを行った.この結果,IFNーγ,TNFーα処理により発現が明かに増強していた.このことはこれらサイトカインの効果はトランスクリプショナルレベルでの制御も受けていることを示唆している. さらに,ICAMー1を発現している腎癌細胞株とlymphokineーactivated killer(LAK)細胞との結合に対する抗ICAMー1抗体の効果を検討したところ部分的に抑制することが明かとなった.つまりLAK細胞と腫瘍細胞の結合にはICAMー1が部分的にせよ機能的にも意義を持つと考えられる.
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