研究概要 |
正常ラット膀胱の排尿筋筋切片を利用し,電気刺激による排尿筋収縮に対するMgイオンの作用を実験した。その結果,Mgイオンは電気刺激による排尿筋収縮は増強され,逆に高濃度Mg溶液では抑制された。また,Mgイオンは高濃度Kclおよびcarbacholにより生じる筋収縮に対して弛緩作用を示した。VerapamilとBay-K8699を用いた実験では,Ca-channel blockerであるVerapomilにより収縮抑制効果は増強され,opennerであるBay-K8644により減弱された。細胞内におけるCaイオン貯蔵部位に作動するcaffeineとprocaineの実験では,procaineにより収縮抑制効果は増強されたが,caffeineでは変化が認められなかった。Mgイオンは,主に細胞膜に存在する2種類のCa-channelを抑制し,かつ細胞内Caイオンの放出を制限することにより,排尿筋収縮を減弱・消失させることが示唆された。また,ウサギwhole bladolerの電気刺激による排尿筋収縮に対するMgイオンの作用もほぼ同様の結果であった。 次にヒト神経因性膀胱を利用して膀胱の壁内神経を電気刺激し,その反応性をコントロール膀胱と比較検討した。その結果,電気刺激による高収縮は神経因性膀胱では壁内神経の刺激に対して反応性が亢進していた。Tetrodotoxinを加えたところ両群の膀胱ともに収縮反応は消失した。Atropineに対してはコントロール膀胱に比較して神経因性膀胱では有意に高いatropine低抗性収縮を認めた。閥値下Kclに対しては神経因性膀胱,コントロール膀胱ともに反応性は増大したものの,この増大率は神経因性膀胱でより小さかった。またCa-free溶液に変換後の収縮反応の減衰は神経因性膀胱の方が有意に緩徐であった。神経因性膀胱とコントロール膀胱の間には基本的な収縮力には差はなかったものの,電気刺激に対する収縮反応,アトロピン低抗性,Kイオンによる収縮増強作用,Ca-free溶液中での収縮反応には有意差を認めた。
|