研究概要 |
アンドロゲンは、多くの組織、細胞で多様な生理作用を演じていることが良く知られているが、それらの分子機構の解析、とりわけ遺伝子発現のレべルでの解析は進展を示しておらず、他のステロイドホルモン応答性遺伝子発現系の解析の進展とは対照的である。このような状況のもとで、私共は最近、古典的なアンドロゲン標的組織の一つであるラット精嚢のアンドロゲン応答性遺伝子発現系の検索に着手した。その結果、3種類のアンドロゲン応答性mRNAsのcDNAクローンの分離に成功し(Izawa M,1990,Endocrinol Japan37,223,Izawa M,1990,Endocrinol Japan37,233)、今回の研究において全塩基配列を決定した(Izawa M,1991,EndocrinolJapan38,577)。これらの成果は、ラット精嚢に新たなアンドロゲン応答性遺伝子群の発現を立証した。さらにfull-lengthのcDNAの分離を推進している過程で、上記の3種類のcDNAクローンと密接な関連を有する、ホルモン応答性と性状の異なる複数のmRNAsのcDNAクローンの分離に成功した(第64回、第65回日本内分泌学会総会、投稿中)。一方、分離したcDNAクローンpSvr-1mRNAの発現とステロイド依存性組織の退縮過程との関連が示唆される結果を得た(Izawa M,1991,Endocrinol Japan38,61)。pSvr-1はApoptosisの分子マーカーとされるTRPM-2と高い相同性を示すクローンであるが、これをプローブとして用いた、精嚢cDNAライブラリーのスクリーニングにより、シグナルシークエンスを欠くTRPM-2のalternative formと思われるクローンを新たに分離した(投稿中)。最近、アンドロゲン依存性組織においてアンドロゲンに応答して興味ある発現変動を示すMycファミリーのパートナー、ラットMax cDNAのクローニングに成功し(第66回日本内分泌学会総会、発表予定)、アンドロゲンとの関連を検討中である。今後、これらの遺伝子群の解析をさらに推進することを計画している。
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