研究概要 |
1)正常前立腺,前立腺肥大症及び前立腺癌における細胞内/間物質(ケラチン,ピメンチン,ラミニン)の発現様式を検討した.正常前立腺は腺上皮/基底細胞の2層からなり,各々特有のケラチンサブタイプを発現し正常/肥大症前立腺腺上皮にはビメンチンの発現するものがある.前立腺癌細胞は腺上皮特異的なケラチン形質(K.8,18)を有するが,基底細胞特異的なケラチン(K.14,(5,10,11),(13,16))の発現をみず,ビメンチンの発現も認められなくなる.癌の分化度とこれらケラチンの発現様式との間に関係は認められない.また,潜伏癌,及びホルモン療法後の生検を施行したものを検討したが,ケラチンサブタイプの発現様式に変化は認められなかった. 正常前立腺には腺上皮,基底細胞以外に神経内分泌細胞が存在し,この細胞には腺上皮/基底細胞特異的なケラチンの発現は認められない.神経内分泌細胞を標識するChromogranin A(Ch-A)で検討すると,正常前立腺ではCh-A陽性細胞は基底細胞に接して散在し,前立腺癌の多くでCh-A陽性細胞を散在性に認めるが,一部症例でCh-A陽性細胞の腫瘍性増生が認められ,このような症例ではホルモン不応性の傾向がみられた. 3)基底膜の構成成分ラミニン/IV型コラーゲンは,正常/肥大症ではともに腺管周囲外周に取り囲むように陽性像を認め,前立腺癌では高分化であると全周性に陽性像を認めるが,低分化となると断裂または消失を認める. 4)治療経過を追えた症例においてケラチンとその治療効果の間に一定の傾向は認められていない.
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