研究概要 |
HTLV-I母児感染において抗HTLV-I抗体がどの様に機能するのかについて、抗HTLV-I抗体陽性血清よりHTLV-I抗原と推定される合成蛋白を用い抗体分画を採取し、その特異的抗体による感染阻止効果についてin vitroの系により検討した。さらにこの実験系において、HTLV-Iの感染源細胞として樹立された細胞を用いた場合とHTLV-Iキャリアより分離される末梢血単核球を用いた場合との感染の差異によりin vitroにおける抗体の感染阻止作用を解析した。HTLV-I合成蛋白env gp46^<175-199>,gp46^<242-257>,p19^<100-130>それぞれにより採取した抗体分画を用いて検討した成績では、抗env gp46^<175-199>抗体、抗env gp46^<242-257>抗体には感染中和活性が存在していたが、抗p19^<100-130>抗体にはその作用は認めがたかった。しかし、HTLV-I抗原の発現抑制効果の成績は全く逆転した結果であったことから、この抗p19^<100-130>抗体のin vivoにおける阻止作用の役割について検討を進めた。その結果、抗p19^<100-130>抗体はHTLV-I感染細胞におけるHTLV-I蛋白の産生を抑制することにより感染を阻止することが推測された。この作用を最も強く持つ抗p19^<100-130>抗体について検討した結果、HTLV-I gag p19^<115-123>がヒトにおけるgag蛋白としての抗原部位であることが判明するとともに、この部位に対する抗体が先に述べた作用を有することが証明された。今後、この抗体の大量採取とin vivoにおける感染阻止実験によりその効果を確認する必要があると考えられる。
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