研究概要 |
元来、TULLIOPHENOMENONは音刺激により前庭が反応することをみるものであり、眼振により観察を行っていた。そして内耳性梅毒患者や外リンパ漏によるめまいを伴った患者の鑑別に用いられていた。HENNEBERT'S SIGNは外耳道に圧を加える事によってそれらの患者の反応を眼振により、1970年NADOLらにより研究が進められメニール病患者でも異常な反応がみられると報告されている。今回我々は、音響外傷を招くことのないような安全と思われる低周波数成分(2,4,8,16,25,50,63Hz)の音刺激(130ー132dB)に陽圧・陰圧を加えた音刺激として、重心動揺を利用して外リンパ漏患者をはじめメニエール病・前庭神経炎・良性発作性頭位眩暈・めまいを伴った慢性中耳炎などの内耳性めまい患者の安定性について重心動揺を利用して20才から60才までの健康成人による正常群と比較した。末梢性めまい患者・メニエール病患者めまいを伴った慢性中耳炎患者の約20%に異常な反応が認められ、外リンパ漏患者では全員が低周波数音刺激に著明に反応したが、それには生理形態学の面からもさらに追試実験をして、その機構の解明をする必要性が考えられた。長期にわたって低周波数音刺激(最高130dB)暴露下での労働者の前庭での反応を調査するために、80名の森林伐採に携わる労働者の姿勢の安定性を調査した。2KHz・8KHzの低周波数音刺激では無刺激の時と比べてかえって良い結果が得られた。これは恐らく通常では聞き取れないような低周波数音刺激に対しての注意を躍起する反応と考えられた。4KHz・16KHzでは変化が認められなかった。低周波数音刺激は健康成人の姿勢の安定性に影響を及ぼすことはないことが示された。そして姿勢を不安定にする要因(タバコ・年齢・騒音暴露など)についての解析を行った結果、タバコが重要な要因であることがわかった。
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