研究概要 |
口蓋扁桃は,外来抗原に対する一連の防御反応や,免疫反応を行ううえで重要な役割を担うとともに,細菌感染の標的器官でもある.一方,細菌感染巣には,好中球などが遊走し,活性酸素の産生が始まるということも知られており,その産生過剰によりもたらされるであろう扁桃炎臨床の病態生理を知ることによって,その日常臨床への応用を検討すべく行った. 習慣性扁桃炎,および,病巣性扁桃炎症例より摘出された扁桃からリンパ球を分離し,Eロゼット沈降法にてBリンパ球とTリンパ球とに分け,各々のSOD活性について測定を行った.その結果,Tリンパ球のSOD活性はBリンパ球のそれよりも高値の傾向を認め,末梢リンパ球のSOD活性についての過去の報告と同様の結果となった. 習慣性扁桃炎,および,病巣性扁桃炎における末梢血好中球を採取し,その好中球の産生する活性酸素をチトクロームC法にて測定し,その症例の臨床検査所見との相関を検討した.臨床検査には,CRP値,末梢血白血球数,ASO値,扁桃炎罹患回数をとりあげた.また,同一症例において,扁桃炎急性期と,寛解期とにおける末梢血好中球活性酸素産生能についても検討を加えた.その結果,ASO値と好中球活性酸素産生能との間に,統計学的に有意な負の相関を認めた. また,溶血連鎖球菌感染による扁桃炎における活性酸素の作用動態を知るため,溶血連鎖球菌培養上清とともに培養した健常人末梢血好中球の活性酸素産生能を測定したところ,培養上清の蛋白濃度に依存性に活性酸素産生能が抑制される傾向を認めた. 今後,溶血連鎖球菌培養上清中のいかなる成分が活性酸素産生能に影響を及ぼしているのか,また,扁桃なる免疫臓器のリンパ球との関わりにつき知る必要があると認められた.
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