研究概要 |
今回の研究で新しく作製した抗扁平上皮癌関連抗体は,株化樹立喉頭扁平上皮癌培養細胞を材料に,ロトフォアによる等電点電気泳動法を用いてPI5.95-6.05の間に分画された成分を分取し,家兎を免疫して得られた抗体である。 この抗体の認識する扁平上皮癌関連抗原の分子量は,SDS-PAGおよびWestern blotにより還元未処理の材料で約180KDと推定され,またオクタロニー法によりIgG抗体であることが確認された。 次に,抗扁平上皮癌関連抗体の有用性を検討するため,市販品抗体のなかからポリクロナール抗体3種類,モノクロナール抗体3種類を選定し,各種頭頸部組織に対し免疫組織化学的方法(ABC法)により,陽性率,陽性反応部位,偽陽性率を求め比較検討を行った。 被検組織は,上顎癌,喉頭癌,舌癌,扁桃癌,上顎洞粘膜,扁桃,耳下腺,口頭蓋で使用した市販品抗体は,抗ケラチン抗体,抗インボルクリン抗体,抗EGF-R抗体,抗サイトケラチン(PKK_2)抗体,抗K-ras(P21)抗体である。 抗扁平上皮癌関連抗体の頭頸部癌組織に対する平均陽性率は85%で,他の市販抗体による陽性率とは大差はないが,非腫瘍性組織に対する偽陽性率では,抗体により著しい差がみられ,我々の抗体では10.4%であるが市販品抗体では18.3%-85.3%となっている。今日,腫瘍抗体の評価法に診断効率によるものがある。診断効率=(感度)×(特異性)÷100として示されるが、今回の実験成績を診断効率で表わすと,抗扁平上皮癌関連抗体は76%,抗インボリクリン抗体は48%,抗ケラチン抗体は14%,抗EGF-R抗体は44%,抗EMA抗体は49%,抗PKK_2抗体は36%,抗K-ras(P21)抗体は33%となる。この成績は抗扁平上皮癌関連抗体が診断用抗血清として有用であることを示している。
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