研究概要 |
1.近年,ロドプシンの点突然変異がみつかっている区画型網膜色素性症の静的視野閾値と錐体系ERG頂点潜時を検討した結果,一見正常にみえる上方網膜に対応する下方視野が全く正常な明らかな区画型と,下方視野にもある程度の異常のおよぶものの両者がみられた。しかも明かな区画型はphotopic ERGの頂点潜時が正常であることがわかった。 2.網膜色素変性症で行なったERGでの錐体,杆体障害による分類の知見を応用して,錐体ジストロフィー症例のERG診断に錐体反応と杆体反応の振幅比が有用であることを,ERGデータから証明した。 3.黄色斑眼底は網膜色素変性症類似の網膜変性症である,本研究において,検眼鏡所見,螢光眼底所見にて典型的な本症と考えられる症例に対した,十分なERG検査を行い,その結果,本症では極めてまれと考えられる錐体ジストロフィーの所見を得た。本症に関する分子生物学的異常の異質性はいまだ明らかにされてはいないが,ERGに関しては異質性の存在することが明かとなった。 4.網膜色素変性症においてphotopic ERG頂点潜時評価を安定して行う記録条件を検討した。その結果,赤色刺激光よりも強力白色閃光刺激でより安易に頂点潜時の評価が可能であるかとが明かとなった。またこのようにして計画した頂点潜時が正常あるいは軽度しか延長していない症例は発症が遅く予後良好であることが推測された。 5.本症患者で白内障を合併したものについて,レーザー干渉縞視力計であるレチノメータを用いて,術前潜在視力測定を行った。その結果は術後視力とよく相関しており,本症患者に対する白内障手術適応決定に際して,意義深いことを明らかにした。
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