研究概要 |
最近の白内障・眼内レンズ挿入手術は小さな切開を行い、侵襲の少ない方法が取られる傾向にある。そこで眼内レンズを折りたたむことができるシリコン素材のものの使用頻度が高くなってきている。シリコン素材の眼内レンズと現在広く使用されているポリメチルメタクリレート(PMMA)素材の眼内レンズを比較検討した。 猿21頭を用い、角膜切開で前房に入り、水晶体前嚢輪状切開、水晶体皮質吸引、眼内レンズ嚢内固定など、人間と同じ手術を行った。手術後1,2,3,5,7日,1,3,4,5,9カ月後に眼内レンズを摘出し、グルタールアルデヒドで固定し、実体顕微鏡で観察後に、走査電子顕微鏡を用いて眼内レンズの表面を写真撮影し、表面に付着している細胞をシリコンとPMMAの眼内レンズで比較検討した。細胞を2群に分け、直径13μm以下を小細胞、14μm以上を大細胞とした。その後、透過型電子顕微鏡で観察し、細胞の種類を同定した。 小細胞は眼内レンズ移植1〜3日後には、PMMAの眼内レンズの光学表面には3,600〜14,000個の細胞が存在し、シリコンでは0〜3個であった。5〜9カ月後にはPMMAでは5〜50個、シリコンでは0個であった。大細胞は眼内レンズ移植1〜3日後には、PMMAでは0〜70個、シリコンでは0個であった。5〜9カ月後にはPMMAでは2〜4個、シリコンでは0個であった。小細胞は時間の経過と共に、その数が減少し、大細胞は2日目をピークに減少した。大細胞はPMMA眼内レンズ移植2日目の平均細胞面積は18,310μm^2であったのが、5カ月後には37,934μm^2と広くなっていた。小細胞は白血球とマクロファージ大細胞はマクロファージと巨細胞であった。 眼内レンズ表面に付着した細胞を指標として検討したところ、生体の異物反応はPMMAの方がシリコン眼内レンズより強かった。
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