研究概要 |
I、臨床研究 難治性ぶどう膜炎の遺伝子支配を検索したところ,ベ-チェット病とTNFーβ遺伝子,原田病および交感性眼炎とHLAーDRB1*0405,HLAーDQB1*0401遺伝子が強い相関を示した。また、ベ-チェット病患者末梢血単球のTNFーα産生能をしらべたところ,対照群に比し有意の増加がみられ,これはシクロスポリン治療により正常レベルにまで低下した。一方,原田病や交感性眼炎患者の髄液中増多細胞の多くはCD4^+,CD25^+の活性化T細胞であった。一方,免疫治療については,ベ-チェット病においてシクロスポリン,FK506が,また原田病、交感性眼炎ではFK506が奏効した。中でもシクロスポリン有効例のベ-チェット病患者TNFーα活性は、無効例に比し有意に低下していた。このほか,難治性角膜周辺潰瘍患者においてシクロスポリン2.5%点眼治療が著効を示した。 II、基礎研究 IRBPによる実験的網膜ぶどう膜炎モデルにおいて、TNFーαが重要な役割を果たしていた。一方,実験的緑膿菌角膜潰瘍におけるワクチンの治療効果は、マウス主要組織適合係のクラスII遺伝子であるHー2Aに支配されていることが明らかにされた。 III、まとめ 以上より、難治性炎症性眼疾患の発症機構には遺伝的要因が深く関与し、そこにTNFなどのサイトカインが作用して病態を修飾していることが明らかにされた。従ってシクロスポリンやFK506などの免疫療法剤を病態に応じて全身,または局所投与し、視覚の保持に役立てることが必要である。現在、トランスジェニックマウスモデルにより、遺伝子治療の可能性を検索中である。
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