研究概要 |
人硝子体の可溶性分画を試料として二次元電気泳動を行ったところ、80個以上のスポットが認められ、30種類以上の蛋白が存在すると考えられた。人血清の二次元電気泳動パターンとの比較から、13種類の血清蛋白の存在が推定された。また、血清の泳動パターンには認められないスポットも認められた。そのうち、最も顕著であったのは、分子量47,000でalbuminよりやや低い等電点の領域に認められたスポット群であった。この他、分子量88,000、25,000、21,000、17,000の領域にも血清では存在しないスポットが認められた。これらが、非血清蛋白であることを確認するために、抗ヒト全血清を用いたアフィニティ・クロマトグラフィを行った。硝子体では、蛋白量として結合分画が80%、非結合分画が20%であり、二次元電気泳動像では、血清で認められたスポットのほとんどは結合分画に、また血清には認められなかったスポットは非結合分画に泳動された。死後変化の影響を知るために家兎を用いて、死後直後と24時間後に採取した硝子体の泳動パターンを比較したところ、少なくとも、48時間後に新たなスポットの出現は認められなかった。次に培養人網膜色素上皮細胞の培養液に硝子体を添加したところ、細胞増殖を促進し、コントロール(100%)に比べて207.3%を示した。硝子体の結合(血清)分画、非結合(非血清)分画はいずれも、156.5%、159.7%と細胞増殖を促進した。両者の間に有意差はなかったが、蛋白量あたりに換算すると、非結合(非血清)分画の方が約4倍細胞増殖に対する活性は高かった。以上の結果から、硝子体中には従来考えられていたより、多くの種類の蛋白が存在し、その中には血清由来でない蛋白も存在すること、また硝子体可溶性蛋白は網膜色素上皮細胞の増殖を刺激することが判明し、増殖性硝子体網膜症の発症に重要な役割を演じていることが示唆された。
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