研究概要 |
1.ヒト顎下腺腺癌細胞の無血清培養で増殖可能なサブクローン、HSG-S8細胞はBMP-2mRNAを発現し、そのタンパク質を培地中に分泌していることをノーザンブロットとウェスタンブロット解析で明らかにした。引き続いた研究によって当初の結果と異なり、BMP-1,-3,-4のシグナルは発現していないことを確認した。さらに、BMP-2mRNAはレチノイン酸(all-trans type,1μM)の6-24時間処理によって顕著に増強した。cell laysateおよびコンデッションド培地中のBMP-2タンパク質もレチノイン酸(1μM,48h)処理で約5倍に増加した。レチノイン酸は同時にc-mycmRNAの発現をdown regulateして細胞増殖を対照の約60%に抑制した。レチノイン酸によるBMP-2のup regulationはc-mycのdown regulationの結果かどうかについてはさらに検討中である。 2.HSG-S8細胞の移植腫瘍組織内に形成された骨(皮下移植)および軟骨(筋組織内移植)の誘導は、移植されたHSG-S8細胞がin vivoにおいて合成分泌したBMP-2によることが明らかになった。 3.免疫組織化学では、ヒト正常唾液腺には抗BMP(s)抗体に陽性部位は見られなかった。多形性腺種の腺管状、充実性増殖部の腫瘍性筋上皮細胞、粘液腫瘍部の一部の紡錘形細胞、および軟骨組織部の一部の腫瘍細胞が陽性であった。しかし腫瘍組織内に軟骨を含むものと含まないものとでBMP(s)の局在に差が認められなかったことから、腫瘍組織内の軟骨形成には他の要因が必要と考えられた。 4.予備実験からBMP-2以外の未知の骨誘導活性因子が発現している可能性を否定できないので、培養上清から骨誘導活性因子の精製を継続中である。これを完全精製し、その部分塩基配列からオリゴヌクレオチドを合成してプロープとしクローニングを行いたいと考えている。
|