研究概要 |
Bisphosphonatesは新規の骨吸収抑制薬として近年注目されている薬物である。本研究では歯槽骨吸収に及ぼすbisphosphonatesの効果に関する検索を行い、その臨床応用への可能性を探求した。実験には我々が開発した低Ca食による骨吸収実験モデルを用い、bisphosphonatesの骨吸収抑制効果を組織学的に検討した。生後30日齢体重70-80gのWistar系雄性ラットを用い、代謝ケージにて個別に飼育した。実験開始時に実験群のラットには、低Ca食(0.05% Ca,0.35% P)を与え、対象群のラットには正常Ca食(0.5% Ca,0.35% P)を与えて飼育した。両群のラットをさらに2群に分けて、実験群ラットにはl-hydroxyethylidene-1,1-bisphosphonate(HEBP)を4mgP/Kg/dayの投与量で連日6日緩皮下注射し、対象群には同容量の生理食塩液を皮下注射した。ラットは飼育6日目に屠殺して下顎骨を採取し、非脱灰研磨切片を作製した後、画像解析装置を用いて形態計測を行った。CMR像による観察では、対象群に比べて低Ca食群の歯槽骨では、臼歯と切歯の間に存在する海綿骨を中心に骨吸収が進行し、骨量と骨幅の現象が認められた。一方、HEBPを投与したラットでは低Ca食群に起こる骨量の減少が抑制され、骨量の増加が観察された。形態計測による解析結果より、低Ca食群に比べて低Ca食+HEBP投与群では、骨面積および平均骨幅が有意に増加していた。このような骨吸収抑制作用はHEBPの骨塩の溶解を阻害する作用と、骨吸収細胞系におよぼす作用が複合して発現したものと考えられる。以上の結果から、HEBPは本実験系における歯槽骨吸収を抑制する作用を有することが示された。Bisphosphonatesは新規の骨吸収抑制薬として近い未来、歯科臨床において歯槽骨吸収を抑制する薬物としての応用が期待される。
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