研究概要 |
最初のステップとして、遺伝子工学で宿主になり得る大腸菌(HB101株)のL型菌を分離した。PCGーProtoplasting Broth(1% proteose peptone,1% antibiotic medium,10% sucrose,0.35% NaCl,0.1% glucose,0,2% MgSO_4,1,000U/ml PCG)中で37℃3時間培養した菌液を寒天平板(2% BH,10% NAーsuccinate,1% BSA,0.2% MgSO_4,1% agar,250U/ml PCG)に接種してL型集落を分離し、平板培地で200代更に液体培地で100代以上継代培養した。このようにして分離されたL型菌はアンピシリンに対して4mg/ml以上(親株のそれは4μg/ml)の耐性を示し、0.1%SDS2分間の菌体処理で集落形成率が0.56%(親株のそれは45%)迄減少し、LPSの含量において親株のそれの約1/20で菌体1mgあたり154ngであった。また2%食塩加BHIブロス中で最高5×10^7/mlまで増殖するが、食塩無添加のBHIプロス中では菌の増殖は一切認められなかった。 次に、クロラムフェニコ-ル(CM)耐性を担うプラスミドpHSG396を1μg用いてこのL型菌をPEG処理したところCM耐性集落が生じた。形質転換でCM耐性菌が生じたことを確実に証明する為にプラスミドを加えていない系とD NaseーIで処理したプラスミドを加えたの系でPEG処理したところ、耐性菌は出現しなかった。さらにCM耐性集落からプラスミドを分離し、ゲル電気泳動で調べたところpHSG396と同じ位置にバンドを認めた。この系での形質転換の効率は対数増殖後期の菌よりも早期の菌が良く、それは10^<-4>であった。 次のステップとして、親株ではペリプラズム空間に存在する蛋白がこのL菌型では細胞壁がない故に培養上清に漏出してくることを証明する為に、この空間に存在するアルカリンホスホタ-ゼ酵素の局在を調べると共に、Antigen A(齲蝕ワクチンの候補)の遺伝子を担うプラスミドでこのL型菌を形質転換させその発現を調べている。
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