研究概要 |
本研究はラットの咬筋運動ニュ-ロンの逆行性軸索輸送の調節にドパミンシステムが関与していることを明かにすることを目的として行った。まず、組織切片上の西洋ワサビペルオキシダ-ゼ(HRP)陽性細胞の顕微鏡像を画像解析装置(SPICCA)に濃淡画像として入力し、その濃淡の程度を解析装置で分析することによりHRP反応産物量を測定する方法を確立した。この測定法を用いて以下の実験を行った。HRPをラットの咬筋に注入、その直後に5種類のドパミン受容体遮断薬を投与した。D1およびD2両方のドパミン受容体に作用する遮断薬としてクロルプロマジンとハロペリド-ルを用い、D1受容体に特異的な遮断薬としてSCH23390、D2受容体にのみ作用するものとしてスルピリド、ドンペンドンを使用した。対照群のラットには遮断薬を溶解するのに用いた溶液のみを投与した。16時間後、ラットに心潅流固定を施した。脳幹を摘出、厚さ60μmの連続凍結切片としてTMB反応に供した後,咬筋運動ニュ-ロ-ン群に存在するHRP反応産物量を測定した。クロルプロマジン、ハロペリド-ル、SCH23390およびスルピリドは対照群に比較して有意にHRPの輸送量を増加させた。それに対して血液脳関門を通過できないドンペリドンは輸送量に有意な影響を与えなかった。これに加えて、クロルプロマジン(8mg/kg)の静脈内投与は、三叉神経中脳路核の刺激によって引き起こされる単シナプス咬筋反射EMGの振幅を著しく増加させることが明かになった。これらの結果は咬筋運動ニュ-ロンの神経末端でのHRPの取り込み及び細胞体への輸送の調節に関与するドパミンシステムが、運動ニュ-ロンとシナプスを介して連絡している上位中枢に存在することを示唆する。またマイクロダイヤリ-シス法による放出伝達物質の変化の追跡等は現在検討中である。
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