研究概要 |
peptide hormoneの一種であるコレキストキニン(CCK)は,中枢神経系および末梢神経系に存在し,神経伝達物質あるいは修飾物質として演じている可能性が暗示されている。しかし,脳や消化管の存在するCCKがどのような生理的役割をもっているかは未だ充分明らかでない。 今回,実験に用いたセルレタイド(CER)はcholecystokinin-octape-ptide(CCK-8)類似のペプチドで,自発運動の抑制,不隨意運動の抑制,抗精神病作用などを示すことが示唆されている。CERが胃液や膵液の分泌を亢進することが知られていることから,本研究では,CERが唾液分泌反応にどのような影響を与えるかを自律神経系との関わりにおいてCCK-8と比較検討した。 マウスを用いたRichter法の変法(唾液を濾紙に吸着させる方法)による今回の実験のにおいて,CERは単独では唾液分泌反応には影響を与えないが,交感神経系のβ作用,特にβ_1作用による感受性変化に応答して唾液分泌を亢進した。これに対して,CCK-8は,単独ではCERと同様に,唾液分泌反応には影響を与えないが,副交感神経の感受性変化に応答して唾液分泌を亢進させた。従って,CERはマウスの唾液分泌反応に対して,自発運動に対する作用と同様に,CCK-8と異った薬理学的性質を示すことが明らかになった。なお,CERおよびCCK-8はいずれも交感神経系のα作用には影響を与えなかった。CERのGABA神経系,ドパミン神経系,セロトニン神経系に及ぼす影響についても明らかにしなければならないが,これらは今後の課題である。
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