研究概要 |
昨年度からの本研究の継続実験として、EDDPOを用いる硬組織時刻描記法を確立するために検討されるべき基礎的条件、すなわち、時刻描記するための適正な投与用量、投与経路、組織標本作製上の問題点を検討する実験をおこなった。これには、ラットの切歯を対象としてEDDPOを32,8,14,20,26,32mg/kgの順で背部皮下注射、あるいは腹腔内注射の2経路で投与し、最終投与の翌日にホルムアルデヒド、グルタ-ルアルデヒド、あるいはKarnovskyの3種類の固定液で灌流固定した後、同固定液に3日間、1、2、3、5、あるいは8週間の6段階で浸漬固定した。切歯を含む下顎骨の試料について、急速脱灰液、あるいは蟻酸の2種類の脱灰液で脱灰した後に常法にしたがってパラフィンに包埋した。以上72種の組合せのブロックを作製して6μmの薄切切片を作製した。ヘマトキシリン染色はCarrazi,Delafield,Gill ♯2,Harris,Mayer,Weigertの6種類の染色液で染色した。以上の処置で得た計432種類の標本についてEDDPOの時刻描記線を比較観察した。結果を要約すると、本法の適正条件は投与経路は皮下、腹腔内投与のいずれでも結果は変わらず、鮮明な時刻描記線が得られるEDDPOの用量は14〜32mg/kgであった。固定液は中性ホルマリン、固定期間は5週間以上、脱灰液は急速脱灰液、ヘマトキシリン染色液はWeigertまたはCarraziが鮮明な描記線を得るのに適当であることが認められた。なお、本実験に並行しておこなったEDDPOの毒性実験では、描記剤として用いる上記の適正用量ではEDDPOの毒性は現れないことを認めた。以上の実験結果の詳細については論文にまとめて投稿中である。なお、EDDPOによりヘマトキシリンに濃染した時刻描記線が出現する機序についての実験は、ラベルした〔 ^<14>C〕ーEDDPOの合成(特別注文)に手間取ったため、現在実験をおこなっており、近々報告できる予定である。
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