研究概要 |
本研究は,咀嚼的には,常に間欠的な機械的外力が歯周組織に負荷され,その機械的外力が歯周組織を構成する細胞に対していかなる応答を示すかを解明することを目的としている.そこで,ヒト歯根膜由来線維芽細胞(HPLF)の培養系の確立を行い,機械的外力としてFlexercell strain unitを用いたstretchingとcollagengel内培養を用いたゲルの収縮により,直接HPLFに負荷した.細胞の応答として細胞の増殖(DNA量)と分化(alkaline phosphatase:ALPase)を検索し,さらに,細胞間の相互作用の活性を,細胞接着伸展因子(CASFs)の生成を検討した. その結果,機械的外力の強度をculture plateの低部の伸張度によって6,18,24%とし,confluentのHPLFに負荷し,DNA量とALPase活性を測定したところ,DNA量は殆ど変化がなかったのに対して,ALPaseは,強度に依存して増加した.このことから,明かにstretchingにより細胞増殖よりは細胞分化に作用していることが明かとなった.さらに,CASF活性は,18%のstretching強度で最大値を示し,ALPaseの変化と共に18%のstretching強度がHPLFの応答を検索するのに適した強度であった. HPLFのcollagen gel培養においてゲルの収縮現像が認められ,その時細胞の増殖抑制と,ALPase活性が減少していた.また,HPLF由来のCASFsを添加すると,細胞密度がゲルの収縮に充分でなくとも,ゲルの収縮は促進され,collagenと細胞間にCASFsの関与が示唆された. 以上のことから,stretchingによりHPLFは細胞増殖よりはむしろ細胞分化の調節をうけ,また,細胞の接着と伸展を促進する因子の分泌が上昇することが確認出来た.すなわち,歯根膜が咀嚼状態に応じて組織改造する際,CASFsは重要な因子として作用するものと思われる.さらに,このstretchingのmodel実験において,細胞が機械的外力の強度に依存して応答していることが本研究によって明かとなった.
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