研究概要 |
1.方法:健常男子4名,上顎顎補綴患者7名を被験者とし,差圧トランスデュ-サ-(日本光電社製TPー604T),呼吸用アンプ(日本光電社製ARー601G),熱ペン(日本光電社製6201)を用い,Blowing時の陽圧と,Sucking時の陰圧の圧変化を測定,記録。記録された圧変化曲線の(1)最大圧変化(Pmax)(2)圧変化曲線が安定した状態を持続する時間(T)(3)持続時間Tに示す圧(P)(4)圧変化ゼロから圧Pmaxを示すまでに要する時間(TPmax)(5)圧変化ゼロから時間T開始までの時間(T1)(6)T終了から圧変化ゼロまでに要する時間(T2)(7)総Blowingあるいは総Sucking時間(TB,S=T+T1+T2)を測定。被験患者では次の条件で測定。(1)顎義歯未装着で鼻孔開放状態D(ー)NO(2)顎義歯未装着で鼻孔閉鎖状態D(ー)NC(3)顎義歯装着で鼻孔開放状態D(+)NO,そして,顎義歯栓塞部に粘膜調整材(または光重合型義歯床用レジン(光重合型レジンと略))を介在させ(4)粘膜調整材(光重合型レジン)の未削除,未調整状態(5)粘膜調整材(光重合型レジン)のアンダ-カット部調整後の状態。 2.結果と考察健常者では,(1)Pmax,P,T1,T2の値は各被験者ごとに異なった。しかし,同一被験者では測定ごとの値の変動は少なかった。(2)時間Tでの圧Pの経時的減衰傾向は認められず,Tは息の続く限り持続延長が可能であった。被験患者では,(3)D(ー)NCでのPmax,P,T1,T2は健常者と類似した。(4)D(ー)NOでは,Tを認めない場合が多く,またTを認めた場合にもPの減衰傾向が顕著であった。(5)粘膜調整材を用いて顎義歯栓塞部の封鎖性を高めた場合,Pmax,T,P,T2はD(ー)NCでのそれらに類似した。(6)D(+)NOで,時間Tが2〜3秒以上持続,圧PがPmaxに近似すればするほどBlowing,Sucking時の鼻漏が少なかった。(7)光重合型レジンを用いた場合,D(ー)NCでのPmax,T,P,T2を目標基準値として,術式各ステップで口蓋咽頭閉鎖度の調整,改善が可能であった。 以上のことから,本測定装置を応用し,各被験患者のD(ー)NCでのPmax,T,P,T2を基準値とし,D(+)NOでのPmax,T,P,T2とそれらと比較することで最終顎義歯装着後の口蓋咽頭閉鎖度の定量的・客観的な評価ができることが明らかとなった。
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