研究概要 |
若年者の幼若永久歯における歯牙破折や高度のう蝕による歯髓疾患の治療は,根尖が未完成であるために機械的な根管充填が難しく,現在,水酸化カルシウム製剤を用いたapexificationによる生物学的な根尖閉鎖の促進が図られているが,改良の余地が残されている治療法である。 本講座ではこれまで骨形成因子(以下BMP)に関する研究が行われ,歯牙象牙質にもBMPが存在することを見出したが,このことはBMPが象牙質の形成にも関与することを示唆するものと考えられる。本研究ではBMPを根管充填した場合の作用を評価・検討し,従来の治療法よりも術式が容易で効果が確実な根尖閉鎖術を開発し,根未完成歯の根尖閉鎖に応用することを目的としてきた。 本講座ではMBPの部分精製物をイヌ(雑種成犬)の人工的顎裂部に移植し,自家骨移植に代わる顎裂閉鎖術の開発を目的とした実験を行い,良好な結果を得ている。これに用いたBMPは,ウシ大腿骨を0.6N塩酸で脱灰し,4M塩酸グアニジンで抽出し,濾過・透析・遠心を行い,沈殿物を回収した部分精製物である。この部分精製BMPで,抜髓・根管拡大を行ったイヌ(雑種成犬)の下顎犬歯に対して根管充填を試みた。 現時点では,イヌの歯牙・根管の形態の複雑性により,十分な根管充填が困難であること,BMPの根管充填材に適度な流動性を与える担体の使用が困難(これまで使用してきた酸性アテロコラーゲンゲルの流動性は良好だが,コラーゲンの影響が排除できない。)であることなどから安定した結果が得られていない。加えて,雑種成分の入手が困難になり実験動物について再検討しているのが現状である。
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