研究概要 |
小児においてハロセン麻酔導入時にサクシニルコリン(以下Sch)を静脈内投与した場合に血清ミオグロビン(以下Mb)値とCK値が著明に上昇するが、今回、イソフルレン麻酔時の両値の変化について検討し、ハロセンと比較した。全身麻酔下に小手術を受ける、2歳から12歳のASAリスク分類1の小児78名を対象とし、用いる麻酔薬とSchの投与法によって4群にわけた。すなわち、笑気・酸素・イソフルレンまたはハロセンを用いて緩徐導入後、Sch1mg/kgを静脈内または筋肉内投与して気管内挿管を行なった。維持は導入に用いた麻酔薬を用いた。緩徐導入後に対照用採血を行い、Sch投与前、5分、20分、60分後の計4回採血を行った。検体は血清分離後凍結し、MbはRIA法、CKはロザルキー変法により測定した。統計的検討はStudentのt-testを用い、危険率5%未満を有意差ありとした。 その結果、4群ともMb値とCK値は対照値に対して5分値から有意に上昇し、60分値で最高値を示した(Mb、CK60分mean±SD値イソフルレン;Sch静脈内2946±3579ng/ml,CK(/Control)536±650%,筋肉内1129±2390ng/ml,129±177%、ハロセン;静脈内2917±4396ng/ml,374±421%,筋肉内973±1254ng/ml,10±59%)。ハロセン麻酔との比較ではMb値・CK値とも有意差を示さなかった。電解質の変化についてはSch筋肉内投与で5分と20分のK^+値が高かった。Na^+とCa^<++>値は低下傾向、無機リンは5分で上昇傾向を示したが、麻酔薬とSchの投与法の相違による特異的な変動は明かでなかった。K値また、Mb値、CK値の上昇と電解質値の変動との間にに相関性は得られなかった。以上の結果、イソフルレンはハロセンと同様に血清ミオグロビン値とCK値を増加させると考えられた。
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