研究概要 |
前年度の本研究で骨芽細胞と骨髄細胞の混培養上清を添加して骨髄細胞を培養したところ、Mac-1,LFA-1抗原強陽性細胞はマクロファージに分化すると考えられるが、破骨細胞の前駆細胞はMac-1,LFA-1抗原弱陽性細胞に含まれることが示され、混培養上清にはこの破骨細胞の前駆細胞を増加させる因子の在存が示唆された。平成4年度は骨髄細胞を用いてin vitroにおけるMac-1,LFA-1以外の接着因子(CD44,Mel14)の発現と破骨細胞形成との関係をFACSを用いて詳細に検討した。また、in vivoの歯周組織における破骨細胞およびその前駆細胞におけるそれらの因子の発現、さらに、矯正学的に歯を移動させることにより起こる骨吸収時の接着因子の発現の変化を免疫組織化学的に検討し、以下の結果を得た。 1.骨髄細胞に混培養上清を添加して培養し、付着性細胞、非付着性細胞に分けた場合に付着性細胞は非付着性細胞に比べてMac-1,LAF-1,CD44陽性細胞の割合が高く、かつその発現強度も高かった。 2.付着性細胞ではLFA-1の発現強度が低く、CD44の発現強度が強い集団から、非付着性細胞では、Mac-1,LFA-1,Mel14抗原を有し、LFA-1とMel14の発現強度の低い細胞集団からTRACP陽性多核細胞が多く形成された。 3.歯周組織におけるMac-1,LFA-1,ICAM-1の発現について検討したところ、Mac-1,LFA-1陽性細胞は、歯根膜や骨髄中にみられ、ICAM-1陽性細胞は根尖部歯根膜、血管壁、骨髄に発現していた。 4.歯牙を矯正学的に移動させると、移動初期にこれら接着因子の陽性細胞が増加した。この時圧迫側では骨吸収が見られ、それに伴い破骨細胞が増加していた。 以上の結果より、破骨細胞の誘導過程において接着因子が深く関与していることが明かとなった。
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