研究概要 |
フッ素徐放性レジンを矯正用接着剤として応用することを試み,フッ素徐放性レジンのブラケット接着部位周辺における齲蝕予防の効果と矯正用接着剤としての実用性について検討を行ない,以下の様な成果が得られた。 1.ヒト抜去歯を用いてブラケット接着部位周辺エナメル質のフッ素取り込み量の測定と酢酸に対するエナメル質カルシウム溶出量の測定を行ない,齲蝕予防効果のひとつである歯質強化について評価した。その結果フッ素徐放性レジンを矯正用接着剤として応用したとき,ブラケット接着部位周辺のエナメル質のフッ素取り込み量は明かに増加した。またブラケット接着部位周辺エナメル質の酢酸に対するカルシウム溶出量は明かに減少し耐酸性の向上が認められた。またフッ素徐放性レジンを矯正用接着剤として直接口腔内へ応用試行し,3週間口腔清掃を中止した後のブラケット接着部位周辺部の歯垢付着状態を評価した。その結果ブラケット接着部位周辺への歯垢付着状態はフッ素徐放性レジンを応用しなかった対照群と類似しており,フッ素徐放性レジン応用によるブラケット接着部位周辺への歯垢付着抑制効果は本研究では認めなかった。 2.フッ素徐放性レジンの牛歯エナメル質ならびにブラケットに対する引張り接着強さ・せん断接着強さを測定し矯正用接着剤としての実用性を評価した。その結果フッ素徐放性レジンは接着初期から臨床に応用可能なレベルの接着強さを有し,6ケ月間の水中浸漬ののちも臨床応用可能なレベルの接着強さを有することが示唆された。一方フッ素徐放性レジンの口腔内におけるブラケット接着剤強さを測定した結果,フッ素徐放性レジンの接着強さは臨床応用可能なレベルであることが明らかにできた。
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