研究概要 |
いわゆるウ蝕細菌として知られているStreptococcus mutansは8種類の血清型(a〜h)に分類されている。このうち人から高頻度で分離されるのはcとd型であり、d型はStreptococcus sobrinusと呼ばれている。これらの菌の主要病原因子の一つは、スクロ-スから粘膜性のグルカンを合成するグルコシルトランスフェラ-ゼ(GTF)である。S.sobrinusは4種類のGTF(P1〜P4)を菌体外に分泌している。 我々はGTFP1とGTFP3遺伝子をクロ-ニングした。そしてgtfP1遺伝子のDNA塩基配列決定をジデオキシ法によって行った。ところが最初にクロ-ニングしたPstIーPstIフラグメント上のgtfP1には終結コドンが欠けていた。そこでInverted PCR法によりgtfP珂1下流領域のクロ-ニングを行い、この結果得られたPstIーSalIフラグメント(1・3kb)を最初のPstIーPstIフラグメントに対加して全DNA塩基配列を完成させた。 遺伝子gtfP1の上流領域のDNA塩基配列については、第39回JADR総合(1991年,大阪)において学会発表した(題名、ORF in the Upstream Region of Streptococcus sobrinus OMZ176 gtf Gene;発表者Y.ISOBE,Y.AIZAWA,N.HANADA,T.TAKAYAMA,S.SATO and M.INOUE)。 さらに、DNA塩基配列からGTFP1のアミノ酸配列を推定した。そして酵素の活性中心の検索や、異る血清型の菌からクロ-ニングされたGTFの構造と比較した。これらの結果については日本細菌学会(1992年,岩手)にて学会発表する(Streptococcus sobrnus OMZ176株の水溶性グルカン合成酵素活性中心のアミノ酸配列;花田信弘,磯部豊,相沢譲,片山剛,井上昌一,(会員外)佐藤節子)。 現在もうひとつのGTF遺伝子gtfP3についてもDNA塩基配列決定が進行中である。3^1側の約1/3が血清型h株から得られるgtfIと非常に高い相同性を示す結果が得られている。
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