研究概要 |
歯科矯正治療おいて、歯の移動にともなう歯周組織の変化を客観的に把握することは予後を測る意味においても重要である。特に、歯の動揺度は歯周組織の力学的性状をよく反映することから、これに関する情報の解析に問題の糸口となるものである。 本研究は、歯の動揺度を正確に定量化し、組織学的な所見と対比させて検討するための動物実験における測定系の確立を目的とした。 【研究方法】歯の動揺度をより正確に定量化するためには、歯に対する負荷質量を可能なだけ小さくすることが望まれる。そのためには、変位量や振動数などを感知するセンサーは非接触型であるのが条件となる。本実験においては、レーザー変位計(小野測器社製LD-11005-005)を用いて動揺度測定の可能性を検討するため、歯と歯周組織を想定したシミュレーションモデルを作製し測定精度の検討を行った。また、インパルスハンマーの先端にプラスチックチップを取りつけてインパルスを与えそのときの振動様相についてFFTリアルタイムアナライザー(日本電気三栄社製7T26S)によって周波数分析を行った。 上記の測定系を用いて動物実験を行った。実験動物は体重10〜12kgのオスの成犬を用いた。測定方法は、50g,100g,200,500gの荷重を上顎第三切歯唇側面から加え変位量と変位様相を計測した。 【結果】シミュレーションモデルにおける測定系の精度は、200gで2.7%,500gで1.3%と高い精度が認められた。共振周波数においてもスペクトラム波形は同一のピーク値を持ち安定していた。 動物実験において、犬の上顎第三切歯の変位量は50gで18μm、100gで38μm、200gで47μm、500gで65μmであった。共振周波数は、375〜600Hzにピーク値を示した。
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