研究概要 |
1.まず高比放射活性の ^3Hーオキシドスクアレンを化学合成し、閉環生成物であるラノステロ-ルの分離に逆相HPLCを導入することにより、簡便かつ高感度な生成物特異的アッッセイ法を確立した。 2.コレスチラミン投与ラットの肝臓ミクロソ-ム画分に、ラノステロ-ル閉環活性を検出した。各種界面活性剤による可溶化を検討し、0.2%TritonXー100処理により効率良く可溶化することができた。また、可溶化酵素は、バッファ-に20%glycerol,1mM EDTAおよび1mM DTTを添加することにより比較的安定に取り扱えることを見出だした。 3.ミクロソ-ム可溶化タンパクをHydroxylapatite,Isoelectric forcusing,Qーsepharose,高速ゲル濾過のカラムクロマトグラフィ-を組み合わせることにより、精製倍率1860倍、回収率28%でSDSーPAGE上単一なバンドとして精製することに成功した。 4.精製酵素は、分子量75kDのサブユニットからなるhomodimerであり、等電点5.5,至適pH6.5ー8.0,基質に対するKm値55μMであった。アッセイバッファ-へのTritonXー100添加により約5倍活性化され、高塩濃度下で阻害を受けるなど、ブタ肝あるいは高等植物由来の閉環酵素とはかなり異なる性質を示した。 5.精製酵素をLysーCで消化し、逆相HPLCにより2種のペプチドを単離した。アミノ酸配列分析の結果、このうちの1種ーAーHーEーFーLーRーLーSーQーVーTーDーNーNーPーDーYーQーKーはデ-タベ-スに見当たらないシ-クエンスであり、本酵素をコ-ドする遺伝子のクロ-ニングに際して用いるプロ-ブとして利用できる。 以上のように、従来精製困難とされていたステロ-ル生合成における鍵酵素の精製に成功し、その性状を明らかにした。本研究の成果は、今後の活性部位探索研究を進める上で大きなステップとなるものである。
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