研究概要 |
Linsmaier-Skoog液体培地で増殖するシコニン非生成細胞系に精製画分を添加してシコニン生成誘導活性を検出するバイオアッセイ系を用いて、ムラサキ培養細胞のシコニン生産細胞の熱水抽出物を各種カラムクロマトグラフィ(ポリビニルポリピロリドンカラム、QAESephadex A-25カラム(0.1-2M KHCO_3溶出)、ゲルロ過カラム(Sephadex CL6B,0.1M KHCO_3)で分画精製し、活性成分を探索した結果、タンパク質として分子量約2万に相当する酸性多糖画分に誘導活性を検出した。粗熱水抽出画分は活性発現に300μg/mlの投与量を要したが、精製活性画分は、30μg/mlの少量投与でシコニン生成を誘導した。最も活性の強い画分を加水分解後(ウロン酸はカルボジイミド法で還元後)、アルジトールアセテートに誘導し、GCで分析し、ガラクツロン酸(96-97%)とラムノース(3-4%)から成ることを、また、還元末端残基数と全糖量との比率から、この画分は平均18糖残基から成る酸性オリゴ糖であることを明らかにした。メチル化分析とNMR分析で、ほとんどがα-1,4-結合のガラクツロン酸で構成されることを明らかにした。これはα-1,4-ガラクツロナーゼ処理で完全に分解されることからも支持された。少量存在するラムノースは3分子に1箇所の割で1,2-結合として存在する可能性が示唆された。オレンジ由来のポリガラクツロン酸を上記酵素で部分加水分解し、重合度1-15のオリゴガラクツロニドを調製し、誘導活性を調べたところ、重合度11以上のものに活性が認められた。このことから、ラムノースは活性発現に必須ではないと思われた。なお、混合物ではあるが、重合度30前後のガラクツロニドの誘導活性を検討したが、低い溶解性のため明確に活性を検出することができなかった。植物細胞壁断片がエリシターとしてファイトアレキシンの生成を誘導することがよく知られているが、正常な二次代謝の活性化に関与することを明らかにしたのはこれが最初である。
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