研究概要 |
海綿動物は海底という特異な環境に生息するといわれる″底生生物″で,これといった物理的防御機能を持っていないため,進化の過程で,陸上生物とは著しく異なる代謝系あるいは生体防御系を発展させてきたものと考えられる。したがって,海綿動物の代謝する生物活性物質の中から,画期的な医薬リード化合物が見出される可能性が高いと考えられる。本研究では,沖繩サンゴ礁域で採集した海綿類を中心に,先導的医薬素材の探索研究を行ない,現在までに以下の成果を得た。 1. 沖繩県八重山列島のサンゴ礁域において海綿類を中心とする底生サンゴ礁生物の採集を行なった。 2. 採集した各種海綿試料の脂溶性におよび水溶性抽出分画について,brine shrimpに対する活性試験,抗菌活性試験,腫瘍細胞に対する細胞毒性試験等の活性スクリーニングを行なった。 3. 沖繩県座間味島で採集した海綿Theonella swinhoeiから,2種の新規4-メチル-3-ケト-ステロイド類テオネラステロンおよびコニカステロンとそのDiels-Alder型環化二量体ビステオネラステロンを単離し,化学反応および物理データの解析からそれらの全化学構造を明らかにした。 4. 奄美大島産海綿Hyrtios erectaから,細胞毒性活性を指標に分離精製し,活性成分として既知5環性セスタテルペンのヘテロネミンと,マノアリド,セコマノアリド,(E)-および(Z)-ネオマノアリド等の鎖状セスタテルペン類を得,直接的な証明を欠いていたマノアリド等の絶対構造を明らかにした。 5. 沖繩県新城島で採取したAdocia属海綿から,抗菌活性を有する3活のポリアセチレン化合物を単離し,物理データの解析から,2種の新規化合物を含むそれらの全化学構造を明らかにした。
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