研究概要 |
ユーディストミンは近年海洋微生物から単離された抗ウイルス作用を持つ一連のβーカルボリンアルカロイドの総称であり、大別すると簡単なβーカルボリン誘導体やオキサチアゼピン環がβーカルボリン環に融合した(1)グループに分けられる。なかでも(1)のユーディストミン類はその強い抗ウイルス活性と特異な化学構造から多くの有機合成化学者の注目を浴びている化合物である。我々は独自の方法でβーカルボリンから誘導した2位にビニル基を持つアゼトピリドインドール(2)をm-CPBAで酸化することにより対応するNーオキシドのマイゼンハイマー転位を経て高収率でβーカルボリン環にオキサゼピン環が融合した(4)を与えた。(4)の骨格はオキサチアゼピン系ユーディストミン(1)の12-カルバ類縁体と見なすことができ、天然ユーディストミン(1)の抗ウイルス作用との構造活性相関を研究する上で格好の化合物である。そこで(4)のジヒドロ体(6,αー体)のエステル部を加水分解後、クルチウス転位によりαーアミノ体(7)に変換することがでた。同様にして(6)のβー体からβーアミノ体(7)を合成した。さらにインドール無置換のαー並びにβーアミノ体(9)を,保護基-SO_2Phを持つ(5)からβ-エステル体(8)を経由してほぼ同様の方法で合成することができた。合成した4種のアミノ体について抗ウイルス活性を検討したところ、インフルエンザウイルス、ライノウイルスなどに対しβーアミノ体のみが活性を示した。中でも、天然ユーティストミンに対応する(9)のβー体にかなりの活性が認められたことは典味深い。
|