研究概要 |
抗ダンシルFvフラグメントの抗原結合部位を決定するためにスピンラベルハプテン(DNS-AmTEMPO)との結合実験を行った。スピンラベルハプテンをFvフラグメントに添加することで、ハプテン結合部位近傍約15A以内に存在する残基由来のシグナルの線幅が増大し、事実上スペクトル上から消失した。この結果より、抗原結合部位の特定が可能となった。抗ダンシルFvフラグメントの場合、ハプテンはVHドメインのH1、H3ループ、およびN末端に囲まれた領域で結合することが明らかとなった。次に,安定同位体フィルター法NMRを用いて、Fvフラグメント中に存在する全てのTyr残基側鎖および他の芳香族アミノ酸残基側鎖のNMRシグナルを帰属した。既に完了している主鎖アミド基の帰属をHMQC-HOHAHAを用いて、Cαプロトンまで拡張する。次に、帰属の確定したCαプロトンをTyr残基側鎖の2',6'プロトンをω1-filtered NOESYにより連結する。さらに、2',6'プロトンと3',5'プロトンはHOHAHAスペクトルにより連結する。これらの解析の結果、Fvフラグメント中に存在する全てのTyr残基側鎖の帰属が抗原存在下および抗原非存在下において完了した。確定した帰属に基づいてFvフラグメントと抗原との分子間NOEを解析したところ、ダンシル環の近傍(4A以内)にH3ループの根元に位置するTyr-96HとTyr-104Hが存在することが判明した。 さらに,以上述べた戦略を他の芳香族アミノ酸残基(Phe,Trp,およびHis残基)に適応し,側鎖シグナルの帰属を確立した.帰属に基づき,分子間NOEを解析した結果,H1ループに位置するPhe-27Hが抗原の近傍に存在することが判明した.また,重水素化Fvフラグメントの解析より,VHドメインN末端のVal-2Hが抗原結合部位に存在することが示された.
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