研究概要 |
磁性体を配合した錠剤を調製し,外部磁力による標的指向の可能性を錠剤の胃内滞留を指標として検討した。モデル薬物として胃内(酸性条件)でのみ溶解するシンナリジンを25mg配合し,ヒドロキシプロピルセルロ-ス(賦形剤,徐放化剤),γーFe_2O_3(磁性体)と混合して125mg直径6mmの錠剤とした。磁性体の配合率を10〜50%の間で変化させ,溶出性と磁気応答性を測定して,最適な配合率を探索した。 日局第1液を試験液とし,37℃,パドル回転数100γpmとして,12時間にわたり溶出試験を行った。シンナリジンの溶出性は,磁性体配合率の増加にともなって上昇し,50%配合では12時間内に65.1%が溶出した。これは適当な徐放性とみなすことができる。次に磁気応答性を各錠剤についてレオメ-タ-を利用して測定したところ,やはり磁性体配合率の増加と共に,磁気応答性が直線的に上昇した。以上の結果より,ヒドロキシプロピルセルロ-スが磁性錠剤の賦形剤,徐剤化剤として有用であること,磁性体配合率は50%とするのが適当であることが確認された。そこで次にビ-グル犬を用い,胃内滞留性を検討した。絶食させたビ-グル犬を無麻酔下で固定ワクに吊り下げ,腹帯を用いて胃の部位に永久磁性を設置できるようにした。磁性体50%を配合した錠剤を投与し,経時的に採血して血漿中シンナリジン濃度をHPLC法で測定し,磁石適用の影響を調べた。その結果,胃の内側で約2600Gの磁力を発揮し,錠剤に30,000dyne/cm^2の力を及ぼす条件において,投与後7時間以降,磁石不適用群との間に相違が認められた。磁石不適用では12時間で血中から薬物が消失したが,7または10時間適用した群では24時間後にも検出された。 以上の結果および投与後に屠殺して得た剖検の結果から,磁性体配合錠剤が外部磁力により胃内に滞留することが確認され,磁力による標的指向性を備えた経口薬物送達システム実用化の可能性が示唆された。
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