研究概要 |
プロスタサイクリン(PGI_2)は種々の刺激に応じて血管内皮細胞において産生され,血小板凝集放出抑制作用,血管平滑筋弛緩作用を有する。申請者は,肥満細胞にPGI_2受容体が発現していることを見い出した。大量調整が可能な癌化肥満細胞において,PGI_2受容体はGsとカップルし,アデニル酸シクラーゼを活性化することを見つけた。PGI_2はアデニル酸シクラーゼを活性化し細胞内cAMP量を増大させることにより,ヒスタミン分泌促進剤であるトロンビンによるCa^<2+>動員を抑制する一方で,ATPによるCa^<2+>動員を増大させ,肥満細胞活性化剤の作用を調節していることがわかった。PGI_2受容体の実体は未だ不明であったので,受容体自体を光標識法により同定することを試みた。PGI_2の安定な誘導体,アジドフェニルイソカルバサイクリンの^3H標識体を合成し,癌化肥満細胞のPGI_2受容体を光標識したところ,分子量約42Kのタンパク質として同定できた。同様にブタ血小板のPGI_2受容体も光標識し,分子量約45Kのタンパン質がラベルされた。 一方,申請者はすでにクローニングされているトロンボキサンA_2受容体のcDNAの塩基配列を基にホモロジースクリーニングを行ない,癌化肥満細胞からPGE受容体のEP_3サブタイプのcDNAをクローニングした。クローニングした受容体は7つの細胞膜貫通ドメインを持ち,G蛋白カップルのロドプシンタイプの受容体の構造をしていた。ノザンブロットの結果からEP_3は腎臓,子宮に最も多く発現しており,ついで胃,胸線,肺,脾臓にも発現しており,EP_3を介した生理利用の発揮されている部位とよく一致した。クローニングしたEP_3のcDNAをCHO細胞に発現させてその情報伝達系を検討した。EP_3はアデニル酸シクラーゼ促進活性Fイノシトールリン脂質代謝亢進の作用はなく,アデニル酸シクラーゼ阻害活性のみを結果,これを通して作用を発揮していると考えられた。
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