研究概要 |
1.ラットの脳における組織カリクレインの分布を調べたところ,酵素活性を示す活性型カリクレインは脳内に一様に分布していたが,その前駆体であるプロカリクレインには部位特異的な分布が認められ,松果体視床下部,臭脳,海馬,線条体,中脳,大脳皮質,間脳,小脳の順に高値を示した。また,松果体おける組織カリクレインの生合成量(活性型カリクレイン+プロカリクレイン)は他の部位に比べ,10倍以上であった。 2.松果体におけるプロカリクレインと活性型カリクレインの存在比は20:1であり,腎臓(存在比,1:1)に比べ,プロカリクレインから活性型カリクレインへの変換に関与する酵素は少ないものと考えられる。 3.低食塩飼料で飼育したラットでは,血中アルドステロン濃度の上昇に伴って腎臓の組織カリクレイン量が増加したが,松果体の組織カリクレイン量に変動はみられなかった。また,松果体の組織カリクレイン含量には性差も認められなかった。したがって,松果体では,腎臓とは異なった機構により組織カリクレインの生合成が調節されていると考えられる。 4.免疫組織化学的手法により,松果体では特殊なカリクレイン産生細胞が存在することを確認することができた。現在,この細胞の同定に関する実験を遂行している。
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