研究概要 |
NDPキナ-ゼは(d)NTP形成と主な役割として生物界に普遍的に存在する必須の酵素である。近年、本酵素が情報伝達,癌転移あるいは形態形成などにおいて調節的役割を担うことが,私共を含めいくつかのグル-プによって明らかになってきた。本研究は,このような多彩な役割をもつと思われる本酵素に関して,(1)アイソフォ-ムの単離を含む蛋白化学的研究,並びに(2)遺伝子の単離と構造決定を目的として行われ,以下に示す成果を挙げることが出来た。 研究成果ー(1)アイソフォ-ムの単離:既報のcDNAライブラリ-を緩い条件下でスクリ-ニングし,クロスハイブリダイズするものの中から新規cDNA(β)を単離することに成功した。既知のもの(α)と比較すると,翻訳産物はいずれも152アミノ酸残基から成り,両者は16残基が異っていた。ノ-ザン分析の成果,αは心,腎などで高発現しているのに対し,βは脳で高い発現を示し,両者の発現の様式は異っていた。(2)遺伝子の単離と構造解析:ラットゲノムライブラリ-をNDPキナ-ゼαアイソフォ-ムcDNAを用いてスクリ-ニングしたところ,全長を含むクロ-ンを単離することが出来た。α遺伝子は全長約5.5kbで,4エクソンから成ることが判明した。プライマ-伸長法,RNAaseプロテクション法によって,転写開始部位は翻訳開始コドンATGの3ベ-ス上流にあることがわかった。また、イントロン構造をもたないプロセスされた偽遺伝子が多数存在し,その中の5つについて凡その塩基配列を決定し確認した。
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