研究概要 |
当教室において開発された「細胞誘電解析法」の基礎の上に,肺胞・細気管支および毛細管の三者を考慮した肺組織の誘電体モデルを提出し,正常肺および異常肺(水腫肺・無気肺)について生組織中での肺胞の機能動態を,肺の組織構築を壊すことなく追跡することを試みた。 1)摘出肺葉の誘電測定:まず,ラット単離肺葉のbulk impedance測定用として,平行板コンデンサ-型のセルを試作した。これは,気道系および血管系を別個に確保し,陰圧呼吸が可能,両系の容積と圧が独立に変えられるように設計した。これを用いて,(1)100Hz〜500MHz域にわたり精密誘電測定をおこない誘電スペクトル特性と含気率との関係を確定した。(2)潅流固定標本のstereologyから肺胞と血管の形態計測をおこなった。(3)これらの形態情報を組み入れた肺組織の誘電体モデルをつくり,肺bulk impedanceの周波数依存性を濃厚分散系の誘電理論を用いて予測した。 2)無気肺,実験的水腫肺についても同様の測定をおこなった。コントロ-ル群,軽度および重度肺水腫群の間で誘電挙動に著明な差異がみられた。特性量ΔεおよびΔηに着目すると3群間に有意差を認めたので,インピ-ダンス法は肺水腫の重症度の評価に際し,有用な指標を与えるものと考えられる。 3)摘出肺からさらにすすめて,in situ肺の誘電測定についても,「同心円型表面電極」を試作し,従来の平行板型電極によって得られた誘電特性量との異同について調べている。10kHz〜100MHz間においては,ほぼ同一の測定値が得られることが判明した。
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