研究概要 |
慢性肉芽腫症(ChronicGranulomatousDisese:CGD)は反復重症細菌感染症に罹患することの多い先天性疾患であり,この病因は食細胞スーパーオキサイド産生酵素活性欠損である。この酵素は,分子量91kと22kのチトクロームb558膜蛋白と我々の報告した分子量47k,67kと昨年我々が神戸大学の高井教授と協同で同定した第3の細胞質因子(低分子量G蛋白:rac1/2)から構成されることが明らかになった。本年度は,さらにこのrac1/2蛋白のC末の脂質化が活性化に重要であることをも明かにした。また本邦の約100名CGD患者の病型分類を終了し,この調査で発見された8名の細胞質因子欠損患者のEBV tarnsformed cellを作製し,その中で今回は5名の67K細胞質因子欠損型慢性肉芽腫症についてRT-PCR法と直接シークエンス法で,その遺伝子解析を行なった。その結果,一例は423塩基後にAGの2塩基が挿入されており,フレームシフトをおこし,第144番目のロイシンが終止コドンとなっていた。またもう一例は694から879塩基の186塩基が欠失しており,p21srcと相同性のある蛋白部分(SH3)が欠損した変異蛋白を作っている可能性があったが,ウエスタン,ブロット法で変異67K蛋白を確認出来なかった。他の3名については,566番目と1007番目のアデニンがグアニンへ変異し,いずれもアルギニンからリジンへのアミノ酸置換が確認されたが,これらが病因となる変異かどうか検討中である。この様に,ほぼ本邦の細胞質因子欠損型CGD患者についての概要とその遺伝的背景を検索できる様になってきた。
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