研究概要 |
疫学研究,とくに患者一対照研究では,特定要因と疾患との関連の指標としてオッズ比がよく用いられる。リスク評価においては,交絡因子の影響を除くために,当該要因による層別化が行われる。その場合,層別四分表の共通オッズ比に関する推定の問題が生じる。本研究では,点推定のための正確な方法である非心超幾何分布に基づく推定方法、およびその近似的な解を与えるMantelーHaenszelの方法を,FORTRANによりプログラミングした。さらに,共通オッズ比の信頼区間構成のための各種の方法(ExactーP法,MidーP法,条件付スコア検定法,Robinsらの方法および推定関数を用いたSatoの方法など)をプログラム化し,大型計算機およびパ-ソナルコンピュ-タ環境下でも,比較的容易にデ-タから共通オッズ化に関する推測が可能なように,システム構築を行った。 上記のように作成したプログラムを用いて,信頼区間推定のための各種の方法の比較をシミュレ-ションにより実施した。層別四分表に関して,matched design,balanced design,inbalanced designの各場合について,標本数やオッズ比等を変えて実施した。なお,その場合,シミュレ-ションに必要な乱数は,物理乱数発生装置を用いて発生させ,計算は本研究所のHITACーM682Hを用いて行った。その結果,共通オッズ比が1の場合はどの方法も比較的よいperformanceを示したが,ExactーP法とSatoの方法で連続修正を行ったものは,保守的な傾向を示した。共通オッズ比が大きくなると,条件付スコア検定法,Rabinsらの方法,連続修正なしのSatoの方法は,下限は保守的,上限は寛容的になる。ExactーP法は対称的ではあるが保守的な結果を与える。連続修正したSatoの方法はExactーP法に似た結果を与える。シミュレ-ションの結果からは,共通オッズ比の大小、研究デザイン,標本数にかかわらず,MidーP法が名義水準に最も近い信頼区間を構成することが明らかとなった。
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