研究概要 |
胎児肝ホモジネ-トから新しいPー450分子種の精製に成功し,Pー450HFLbと命名した。精製Pー450HFLbのNー末端アミノ酸配列を明らかにすることができなかったが,解析から本酵素のアミノ末端は保護されている可能性が示唆された。Pー450HFLbはラットPー450IA1およびPー450IA2抗体と交叉反応性を示したが,他のファミリ-に属する分子種の抗体,Pー450IIA抗体,Pー450IIB抗体,Pー450IIC抗体およびPー450HFLa(Pー450IIIA)抗体とは交叉反応性を示さなかった。これらの結果からPー450HFLbは免疫化学的,構造的にPー450IAファミリ-に分類される分子種であることが強く示唆された。 Pー450HFLb抗体を用いて胎児肝ホモジネ-トのウエスタンブロット分析を行った結果,この抗体はホモジネ-ト中の均一な蛋白バンドを認識し,その分子量は精製酵素のそれと一致した。Pー450HFLbは検討した全ての胎児肝に存在したが,その存在量には著しい個体差(約30倍)が認められた。発現量の個体差と胎令の関係は例数(n^26)が少なく結論できなかった。 成人肝ミクロゾ-ムにはフェナセチン0ー脱エチル化活性を示すPー450PAが存在し,ヒトのPー450IAファミリ-に属する分子種として知られている。そこで,Pー450PA同様,Pー450IAファミリ-に属すると考えられたPー450HFLbとPー450PAとの免疫化学的類似性について検討した。Pー450HFLb抗体と交叉反応する蛋白は成人肝にも存在したが,その分子量はPー450PAとは明らかに異なった。Pー450PA抗体は精製したPー450HFLbと交叉反応を示さず,胎児肝ホモジネ-ト中にもPー450PA抗体と反応する蛋白の存在は確認できなかった。これらの結果からPー450HFLbはPー450PAとは異なるPー450IAファミリ-の分子種であり,Pー450PAは胎児期にはほとんど発現していないことが示された。一方,Pー450HFLb抗体と反応する成人肝の蛋白は分子量からはPー450HFLbと差がなかったが,蛋白分解酵素により部分消化した蛋白断片には差が認められた。Pー450HFLbは胎児性Pー450分子種であるとこが示唆された。
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