研究概要 |
本研究は高齢者の健康管理をする上で、いかなる臨床検査を行なえばよいかを目的とした.検討した項目は次の2点である.(1)高齢者の全身状態の良否を客観的に示すものとして,血清総蛋白濃度(TP),アルブミン濃度(ALB),ヘモグロビン濃度(Hb),ヘマトクリット値(Ht),白血球数(WBC)を測定した.(2)最近話題になっているB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の各マーカーの保有率を調査した.その結果,(1)高齢者の全身状態を知る指標としては,TP,ALB,Hbが良い指標となることが,対系全例の統計処理により判明した.白血球数や血清コレステロール値は,個人差が大きく,全身状態を知る指標とはなり得ない. (2)肝炎ウイルスマーカーについては,東京在住の老年者について測定したが、B型肝炎ウイルスマーカーが陽性であったのは38.6%であり,このうちHBs抗原陽性者は4.7%であった.HBc抗体および1またはHBsの抗体陽性率は36.8%であり,かなりの頻度であった.HCV抗体陽性率は5.8%であった.また,平成5年度の調査では5.4%であった.HCV抗体陽性者では血清トランスアミナーゼ(GOT,GPT)が異常を示している例が多かった. 以上の結果より, 1.健康状態の良否を知るスイリーニング検査として,血清総蛋白濃度,アルブミン濃度,ヘモグロビン測定が有用である. 2.肝炎ウイルスマーカー,とくにHBs抗原・抗体,HBc抗体およびHCV抗体を検査し,陽性者に対しては健康状態を監視しながら,生活指導をすることが大切である.
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