研究概要 |
補体は異物細胞を認識し破壊するが、自己細胞に対しては障害活性を示さない。この自己防御には細胞膜上に存在する補体制御蛋白が大きく係わっている。補体反応のキーステップとなるC3の膜への沈着を阻害する蛋白(DAF,CR1,MCP)と、最終反応であるC9の結合を阻害する蛋白(MACIF,HRF)の存在が明かとなっている。MACIFおよびDAFは、Glycosylphospatidylinositol(GPI)をアンカーとして膜に結合しているユニークな蛋白であるが。発作性夜間血色素尿症(PNH)では、GPIアンカーの生合成の異常によりGPI蛋白の欠損がおこる。このためMACIF,DAFが欠損し、自己補体に対する感受性が亢進し赤血球の溶血がひきおこされると考えられている。そこで、正常ヒト赤血球より精製したMACIF及びDAFをPNH患者の赤血球に取り込ませ、この時、赤血球の補体に対する感受性がどのように変化するかを検討した。その結果。 1.酸性下の溶血試験(ハムテスト)で、二人の患者(A.M,とF.K.)の赤血球は同定度の溶血を示したが、A.M.の血球のみが中性下でも溶血した。 2.DAF,MACIFは膜上に取り込まれ。ヒト補体による溶血を阻害した。F.K.では両蛋白のとりこみが一相性であったが。A.M.ではMACIFは二相性を示した。 3.DAFは低濃度補体での溶血を阻害し。高濃度での阻害活性は弱い。これに対しMACIFは高濃度補体を強く阻害した。 他の制御蛋白に異常は認められなかったことから、生体内(高補体)ではMACIFが優位に自己防御に作用していると考えられる。また未知の補体制御蛋白あるいは補体アクチベーターの存在が示唆された。
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