研究概要 |
アポEはLDLレセプタ-に対して強い親和性を有することから,その代謝上の意義について広く研究されている。アポEは血中リポ蛋白の輸送に関与して,血漿コレステロ-ル値を規定する重要な因子であることを私共はすでに示しているが,その動脈硬化症への関与については議論の分れるところである。血漿コレステロ-ル値を低下せる作用や,コレステロ-ル逆転送系への関与は,アポEによる動脈硬化症阻止作用を示唆している。一方,アポEに富むリポ蛋白はマリロファ-ジに取込まれ易いと報告されており,動脈硬化症を逆に進展させうる可能性も示唆されている。アポEは動脈硬化症に対して促進的に作用するのであろうかあるいは抑制的に作 用するのであろうか。私共は,この点を明らかにする目的で動脈硬化症のモデル動物であるWHHLウサギにアポEを長期投与し,動脈硬化症の成因におけるアポEの意義を明確にした。正常ウサギに1%コレステロ-ル食を負荷して,その血漿よりβーVLDLを分離して約5gのアポEを精製した。10mgのアポEを週3回,8.5カ月間にわたりWHHLウサギに静注した。アポE静注群では,動脈硬化病変の面積は1/2,コレステロ-ル・エステル蓄積は1/3にコントロ-ルと比較して減少していた。以上より,アポEは動脈壁においては,コレステロ-ルエステル蓄積を抑制することにより動脈硬化病変の進展を阻止することが明らかとなった。
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