研究概要 |
糖尿病の成因を遺伝子レベルで解明するために、インスリン抵抗性を呈した糖尿病患者のインスリン受容体異常について検討した。 <症例1>空腹時高血糖,ケトアシド-シスと高度のインスリン抵抗性を伴う糖尿病(RabsonーMendenhall症候群)の13才男子。インスリン結合の著明な抵下を認めた。インスリン受容体遺伝子のイントロンチのスプライス:アクセプタ-部位のコンセンサス配列AGをGGに変化させる点変異を同定した。<症例2>空腹時高血糖,色点表皮腫と高度のインスリン抵抗性を伴う糖尿病(TypeA)の13才男子。インスリン受容体チロシンキナ-ゼ活性の抵下を認めた。インスリン受容体βサブユニット細胞内ドメインの膜直下領域にPro^<986>(CCG)→Leu(CTG)のシスセンス変異を同定した。<症例3>高度のインスリン抵抗性を伴うleprechaunismの1才男子。インスリン受容体遺伝子の一方の対立遺伝子座にβサブユニット細胞外ドメインThr^<910>(ACG)→Met(ATG)のミスセンス変異を、他方の対立遺伝子座には蛋白レベルでチロシンキナ-ゼ領域のC末端半分の欠失をきたすー塩基欠失を同定した(複合ヘテロ)。<症例4>中等度のテンスリン抵抗性,黒色表皮腫,低身長を呈するTyDeAインスリン抵抗症の7才女子。症例3とは血緑関係がないにもかかわらず、同一の一塩基欠失を認めた。<症例5>中等度のインスリン抵抗性,黒色表皮腫を伴う高度肥満症例。PCRーSSCP法によりインスリン受容体遺伝子のエクソン20に異常な移動度を示すバンドをヘテロに認めた。直接シ-クエンス法により、Pro^<1178>(CCG)→Leu(CTG)のミスセンス変異が同定された。Pro^<1178>はプロテイキナ-ゼに共通して認められるDFG…APE配例のProに相当し,Pro→Leu変異によりチロシンキナ-ゼ活性の抵抗性の抵下をきたす可能性がある。 以上,PCRー直接シ-クエンス法、あるいはスクリ-ニング法であるPCRーSSCP法を用いてインスリン抵抗性糖尿病の4症例でインスリン受容体遺伝子の新しい5変異を同定した。
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