研究概要 |
1.我々は先に、家族性中枢性尿崩症の1家系(第1家系)でバゾプレシン-ニューロフィジンII(VP-NP)遣伝子の異常を報告しているが、今回新たに別の3家系について解析を行った。第2家系ではexon1に1塩基置換があり、signal peptideのC端のAlaがThrに置換されていることが判明した(J.Clin.Invest.In press)。第3,4家系では第1家系と同様に、NPの中央部分をコードしているexon2に遣伝子異常が見い出された。第3家系では3塩基欠失のため1アミノ酸が欠損し、第4家系では1塩基置換の結果stop codonが出現する(いずれも投稿準備中)。 2.第2家系でsignal peptideに見い出された異常は、翻訳後初期の段階に影響を及ぼす可能性が高いため、無細胞系を用いた発現実験を行った。正常および異常mRNAを兎網赤血球のライセートにより翻訳すると、19kDaのpreproVPが産生された。正常のpreproVPは、犬の膵臓のrough microsomeを添加することにより21kDaのproVPに変換された。しかしながら、異常preproVPへのprocessingは著しく低下しており、signal peptideが切断されないままにglycosylationだけを受けた23kDaの異常前駆体が産生されていた。したがってこの家系においては、signal peptidaseによるprocessingが障害されproVPの産生が低下することが、尿崩症の発症に関与しているものと考えられた(J.Clin.Invest.In press)。 3.正常のVP-NPcDNAを組み込んだ発現ベクターを種々の細胞に導入し検討することにより、VP-NP遣伝子の発現実験系を確立した。今後この系を用いて、第1,3,4家系における尿崩症の発症機序を検討していく予定である。
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