研究概要 |
私共はグルココルチコイド受容体数減少に起因するグルココルチコイド低抗症の一家系の研究を継続してきた。同一家系二症例の末梢血単核球,Epstei-Barr(EB)ウイルスで形質転換したリンパ球にて,グルココルチコイド受容体の親和性は正常で受容体数が正常の半分であることを確認している。量的に十分供給できるEBウイルスで形質転換したリンパ球をグルココルチコイド受容体遺伝子解析の材料として用いた。形質転換したリンパ球より総RNAを抽出し,逆転子してCDNAを作成した。2500塩基配列を含むグルココルチイド受容体CDNA全体の塩基配列めを決定するために,最適のプライマーを20数個合成したPCRを行い,約400塩基対の各PCR産物を低融点アガロースゲルにて分離し,DNAを抽出した。このDNAをテンプレートとして,^<32>Pでラベルした内側のプライマーをアニールさせ,シークエンス反応終了後シークエンス用ゲルにサンプルをアプライして塩基配列を決定した。その結果グルココルチコイド受容体CDNA2440から6個続くアデニンの中3個のアデニンが欠損していることが明からとなった。発端者である息子,母親ともに同一の遺伝子異常である。この異常は2症例ともヘテロ接合体である。3個のアデニン欠損を含む200塩基対のPCR産物のSSCPを行うと,本2症例では正常者でみられるバンド以外に2本の異常バンドが認められる。異常グルココルチコイド受容体遺伝子の発現実験を検討中である。3個のアデニンの欠損により,グルココルチコイド受容体蚕白(グルココルチコイド結合領域)を構成するアミノ酸,リジンが1個欠失することとなる。したがって受容体蚕白の立体構造が大きく変化し,グルココルチコイドが結合できなくなると相症される。
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