研究概要 |
既知のG蛋白共役型受容体、特にサブスタンスPやドーパミン受容体の膜貫通領域(TMD)からhomologyの高い塩基配列を検索しTMD II,III,V,VIより15merのdegenerate primerを作製した。クロンテック社から購入した末端肥大症下垂体腺腫のcDNAライブラリーと本病院で手術時にえられた末端肥大症下垂体腺腫から作製したcDNAライブラリーからPCR法によりG蛋白共役型受容体の増幅を試みた。後者の場合にはホルモン負荷テストの結果からGRFやソマトスタチンの受容体を発現している腺腫を選んでcDNAライブラリーを作製した。Primerを種々に組み合わせてPCRを行いG蛋白共役型受容体の一部を増幅したところ、約300-500bpのサイズを中心に多数のPCR産物がえられた。また、一部の腺腫では、抽出したPolyA-RNAよりRT-PCR法で同様に受容体の一部を増幅した。これらのPCR産物をある程度サイズ別に分離した後、Bluescript vectorへsubcloningして、その塩基配列を決定した。二十数個のクローンのsequencingを行ったが、そのうち3個のクローンがその塩基配列から未知のG蛋白共役型受容体の断片である可能性が高かった。次ぎに、このDNA断片をプローブにしてcDNAライブラリーのplaque hybridizationをおこなったところ、5個の陽性plaqueがえられた。これら、plaqueのcDNAの塩基配列を調べたところ、1つのクローンがfullsizeのG蛋白共役型受容体で、データベースでの検索で、リガンドは不明ながらも既にクローニングされているCannabinoid受容体である事が判明した。この受容体が末端肥大症下垂体腺腫に発現している事は興味深く、その意義については今後の検討を要する。残りの4クローンのG蛋白共役型受容体cDNAについては、現在full sizeを解析するためsequencing中である。しかし、残念ながら目的とするソマトスタチン及びGRFの受容体のcDNAのクローニングについては、昨年末にそれぞれ外国の研究施設より報告があった。ただ、末端肥大症の下垂体腺腫には、GRFやソマトスタチン受容体以外にも、GHの分泌や腺腫の増殖に関与する未知の受容体遺伝子の発現が考えられ、今後もこれらcDNAライブラリーを使って、受容体のcDNAクローニングを続けていくつもりである。
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